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2021年05月11日

2021年5月号その1 「事業承継に活用したい手法その20~相続と贈与の在り方が大きく変わりそう!」「新刊書籍「令和3年度税制改正のポイント」発刊のお知らせ」

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【1】「事業承継に活用したい手法その20~相続と贈与の在り方が大きく変わりそう!」

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当社の事業の柱の一つは事業承継であり、このコラムの大きなテーマは事業承継事例のご案内です。コロナ後はコロナ禍対応に時間がとられ1年ぶりに事業承継ネタを書きたいと思います。

事業承継においては 経営の承継と財産の承継の2つがあります。このコラムでは主に経営権・議決権の集約について語ることが多いのですが、令和3年度税制改正大綱(政府与党版)では財産の承継で重要な相続・贈与税制の大きな枠組みが変わるということが記載されています。

要約しますと、

  1. 現状で暦年贈与での相続税の負担が回避されている=「現在の税率構造では、富裕層による財産の分割贈与を通じた負担回避を防止するには限界がある。」
  2. 諸外国と同じように一定期間(10-20年)スパンで贈与税も相続財産に加算するべき=「諸外国では、一定期間の贈与や相続を累積して課税すること等により、資産の移転のタイミング等にかかわらず、税負担が一定となり、同時に意図的な税負担の回避も防止されるような工夫が講じられている。」
  3. 今後数年間で相続税と贈与税を一体化します=今後、こうした諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。」
  4. 高齢化後の暦年贈与はあまり意味がないものになる。

 

「アメリカのように一生涯にわたり贈与税と遺産税を一体的に課税」「ドイツフランスのように10-15年の贈与額と相続財産を一体的に課税」のどちらか、つまり高齢化後の贈与は相続税対策としては使えないということになります。

本格的な検討を進めるということから1-2年の間に改正が行われる可能性が高いと思いますので今から動向に注目しつつ早めの対策の実行が重要になりそうです。

 

以下与党税制改正大綱原文です。

「5.経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し

(3)相続税・贈与税のあり方

② 資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討

高齢化等に伴い、高齢世代に資産が偏在するとともに、相続による資産の世代間移転の時期がより高齢期にシフトしており、結果として若年世代への資産移転が進みにくい状況にある。

高齢世代が保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することになれば、その有効活用を通じた、経済の活性化が期待される。このため、資産の再分配機能の確保に留意しつつ、資産の早期の世代間移転を促進する  ための税制を構築することが重要な課題となっている。

わが国の贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から、高い税率が設定されており、生前贈与に対し抑制的に働いている面がある。一方で、現在の税率構造では、富裕層による財産の分割贈与を通じた負担回避を防止するには限界がある。

諸外国では、一定期間の贈与や相続を累積して課税すること等により、資産の移転のタイミング等にかかわらず、税負担が一定となり、同時に意図的な税負担の回避も防止されるような工夫が講じられている。

今後、こうした諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。」

 

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【2】「新刊書籍発刊のお知らせ」

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平成22年税制改正から始まり、12年目となった税制改正書籍の執筆ですが、今年も5月14日に「令和3年度 すぐわかるよくわかる! 税制改正のポイント」(TKC出版)が発刊されます。

 

「VUCAの時代」にふさわしく、DX(デジタルトランスフォーメーション)、カーボンニュートラルという税制から、中小企業向けには「事業再構築準備金税制(いわゆるM&A税制)」などが創設されます。いよいよ本格的な事業承継・M&Aの時代に突入すると思われます。

それ以外にも 教育資金贈与・結婚子育て資金贈与の延長、住宅資金贈与の面積要件の緩和なども行われています。

またもう一つの大きな流れが「デジタル化対応」です。押印が原則不要になり、電子帳簿保存、スキャナ保存も緩和されています。租税条約届出書の原本が不要になるなどの対応もされています。

そして上記の相続税・贈与税の一体化など今後の改正の方向性についても記載されています。

 

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